消えた卒業式とヒーローの叫び

 ショッピングモールの一部に、大きなフードコートがある。

 クレープ、パスタ、アイスクリーム、ラーメン、ステーキ、たこ焼き、うどん、海鮮丼と、様々な飲食店がそこに並んでいた。

 休日のお昼時は人通りが多く、五人で座れるような席は見当たらない。手分けして探すことになり、私は椅子と椅子との間をするりと抜けて行く。

 現実世界に足をつけながらも、私の思考は未だ先程の()の中にいた。

「ぎゃああああ!」

 突然、すぐ近くから叫び声が響く。何事かと思い、一瞬肩が跳ねるも、それは小さな子供の泣き声だった。

「あーもう、はいはい! ほら、行くよ!」


 抱き上げられた子と、その家族が席を立つ。荷物を抱えてテーブルから一歩離れた瞬間、私は椅子に鞄を置いた。

 席を取ることができた。そう伝えなければならなかった。

 でも近くには日彩も三人組も居なくて、私は一人椅子の前に立ち、辺りを見回す。

 隣の席の人が、挙動不審な私を見ているのがわかった。

 私は思わず俯く。小さなリュックと、椅子の背に置かれた手だけが見えた。

 探しに行けばいいことはわかっていたけれど、どうにもあの三人に話しかけられる気がしない。心の中で、情けなく妹の名を呼んでいた。


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