消えた卒業式とヒーローの叫び
注文を済ませ、呼び出しベルを二つ受け取り席に戻ると、上原くんが財布を持って立ち上がった。
「いくらだった?」
「え?」
「それ。部費から出るから、レシート置いといて」
言い捨てるようにそう呟いて去っていく。それと同時に、吉岡くんが帰ってきた。
「お! ステーキっすか! いいっすねぇ」
恐らく、呼び出しベルの色を見てわかったのだろう。私は上原くんに言われた通り、机にレシートを置いた。何も言わない私の代わりに、日彩が答える。
「そうなんですよ〜。でも部費からご飯代まで出るなんて、初めて聞きました! 私は仮入部してないので、お姉ちゃんの奢りですけど」
日彩がからからと笑う。酷い妹だ。でもこの大事な時期に、私の個人的な用事に付いてきてくれたのだから、相当の対価だろう。
吉岡は一瞬不思議そうな顔でいたが、三秒経つ頃には腹を抱えて笑っていた。
「おい、大丈夫か」
汚物を見るような目で、帰ってきた大賀くんが腰を下ろす。吉岡くんはどうしたものか笑いが止まらないらしく、大賀くんの肩に手を預けて全身を震わせていた。
「大賀、聞いてくれよー! 上原が昼食費を部費から出してくれるんだってさ」
その言葉の意味を理解したのかしていないのか、大賀くんの口角が薄らと上がる。
私と日彩は顔を見合せた。何だかよく分からないが、楽しそうな二人を見て日彩も笑っている。私だけが状況を理解出来ず、更には溶け込むことも出来ずにしばらくの間居座っていた。