消えた卒業式とヒーローの叫び
「文化祭?」
「そう。あれは誰が描いたの?」
普段なら、ここまで話すこともできないはずなのに、何故か私は口に出していた。まだ私の意識は映画の世界にいるからだろう。
私はあれほどの作品を作ることはできない。そんなことは百も承知だ。だからこそ、もっと上手くなりたい。
もっと色んな技術を盗んで、素晴らしい作品を作りたい。
唯一私にできることだ。それだけは、何故か負けたくなかった。
欲だけは強い。他ならぬ自分のためだから聞けたのだ。
「描いたのは主に俺。スピード調整とか音楽とか、そういうのは吉岡と大賀メインかな。でも主にってだけで、どれも全員担当してた。テストとかで時間が無かったから、中学の時コンテストに出したものをちょっと改善したくらいなんだけど」
コンテスト、という言葉を耳にして、誰かの会話を思い出した。
『ねぇ、あれ作った人、中学の時どこかのコンテストで入賞したらしいよ』
その時、隣の椅子が動いた。驚いて見上げると、日彩が「お待たせ」と手に持つノートを机に寝かせている。後ろには吉岡くんと大賀くんもいて、二人は上原くんの隣に並んで座った。
「二人ともまだ注文してないのか?」
大賀くんが、上原くんの方へ壁でも作るように荷物を置いてそう言った。
そこでようやくここが昼食を取るために来た場所であると思い出す。理解した瞬間から、お腹が空いてきたような気がした。
「そうだよお姉ちゃん! 私にステーキ奢ってくれるんでしょ?」
そう言って私の顔を覗き込む日彩の瞳は、天井から降り注ぐ無数の照明によって、更に輝きを増していた。
「よし! じゃあ皆それぞれ買いに行くっすか!」
疎らに席を立つ中、上原くんだけは荷物を見ていると言って残る。私は日彩に奢らなければならないため、財布を手に持ち、椅子と別れた。
日彩はすぐさまステーキ店の前に並ぶ。昼間からステーキだなんて、贅沢だなぁと、心の中で財布に話しかけながら私も並んだ。
「見て! 期間限定レアチキンステーキ定食だって! 食べたことないから、あれにしようかなぁ!」
大きくオススメと表示されたそのメニューは、中々のお値段だった。アルバイトもしていない高校生が、映画を観て、自分と妹の分の昼食となると、少々痛い。
それでも自分が言い出したため、容赦のない注文に応えるしか無かった。
「わ、わかったよ……」
手に持つ財布は、内蔵を引き抜かれたように薄くなって泣いていた。