消えた卒業式とヒーローの叫び

「まず理想からだ。永遠の妹は卒業式がしたい。でも出来ない。だから代替の式をする。でもそれはただの式ではなくて、友達と一緒に話せる環境で。指揮者もしてたから、皆の前に立って指揮もしたかったはずだ。卒業証書も先生から受け取りたいと思う。さてこの理想を叶えるにはどうしたらいい?」



 吉岡くんがわざとらしく「うーん」と声を漏らす。上原くんは先程自分が並べた理想を書き出して、テストの採点をするようにそれらを大きく丸で囲んだ。


「無理だと思うけど、俺はその場に連れて行くくらいしか思いつかないな」

 暫くの間があった後、そう言って大賀くんが沈黙を割く。なるほどと言わんばかりに上原くんが手を動かそうとすると、遮るように横から明るい声が飛んできた。


「あ、じゃあ中継とかは! ライブ配信!」


 目を大きく開け、右手の人差し指を上原くんに向けた吉岡くんが言う。

 現代らしい新たな発想に、私も思わず凄いと口に出しかけた。残念ながら、それは喉の中で捻られ、空気となって鼻から抜けてしまったけれど。


「あぁいいな。でも一方的に見るだけじゃ、虚しくならないか?」

 人差し指を払い除けることなく、上原くんはそう言ってルーズリーフに向かい合う。


 私も置いていかれまいと、手を顎に当てて考えた。

「うーん。じゃあ双方見えるようにするとか! パスワード掛けて、他の人には見えないようにした配信をお互い立ち上げて!」


 吉岡くんは輝かしい瞳で私と大賀くんを順に見つめる。天井目掛けて伸びた短髪が、彼の動きによって発生した風で揺られた。

「学校側なら、卒業式が終わった後にでもスクリーンにでも映してもらえるかもな。式中は正直誰も会話はしないだろうし。まあ、永遠の妹が嫌がったら話は別だけど、双方見えるようにするとして、病院だどどこに映すんだ? 手元のパソコンだけだと小さくないか?」


 贅沢な悩みにもなりうるが、上原くんが言うことも一理ある。何なら学校側が大きなスクリーンで日彩を映すよりも、日彩が学校にいるような感覚になれるくらい大きな画面で見れる方が良い。


 そう、その場にいるような感覚にーー。


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