消えた卒業式とヒーローの叫び
「あ……」
私の言葉に、三人が一斉にこちらを向いた。私は発言を撤回するように、慌てて手を浮かせる。
でも、皆の視線は責めるようなものではなく、寧ろ優しく受け止めてくれるような眼差しだった。
無謀だと言われることも覚悟したけれど、この人達を信じることも、私には必要だ。
そう思い、私は浮いた手を握り潰して膝に落とした。
「その……VRを使うなんてどうかな。見る側はゴーグルを着けるだけで良いから場所も取らないし、その場にいるような感覚になれると思うの」
言葉が喉を超えた。何と否定されるか少し怖くて、三人を順に見つめる。でも、そんな心配はいらなかったように、吉岡くんの表情が一変して明るくなった。
「それ名案っす! 三六〇度カメラを使って、その場にいるような感覚とか最強じゃないっすか!」
興奮気味の回答に、強ばった肩が少し緩くなる。机の上で紙を擦る音が少し速くなった。
「なら機材の調整は任せて。確か、少し上の先輩が使ったらしい三六〇カメラが部室にあるって聞いた事あるから、探してパソコンに繋いでみるよ」
「うわ! 大賀心強い!」
まさか、そんなものまで部室にあるとは思わず、一筋の希望の光が差してきた気がした。機械関係に強い大賀くんなら、カメラやパソコンのことを任せても大丈夫だろう。
そんな事を考えていると、からんとペンが机に放られる音がして、空気の流れが変わった。
「でも待て、色々飛ばして考えてたけど、そもそもライブ配信ってことはその場にカメラマンが必要だよな? かつ三六〇度カメラを使ってその場にいるようにするには、カメラマンが永遠の妹の代わりに卒業式に出席する必要があるわけで、その許可を取らねぇといけなくないか?」
はたと気付いたように、再び三人が黙る。吉岡くんがうーんと唸りながら、円になった椅子の周りを歩いて回り始めた。
一歩一歩が時間を刻むように、上靴が床から離れ、また触れる音がする。