暁の夕暮れ ~夏の章~
「わぁ、すごく、いい…」
「うん、レイアウトとかも最高」
今回のCDの曲は、『夏色の恋』という曲で、切なくて、甘酸っぱい、夏の恋をイメージした曲。
夏の恋、か。
「素敵、だなぁ…」
私は写真を見た後、寮の部屋に戻った。
「あー、あっつ……」
いつもならおろしている髪も、今日は少し高いところで縛っている。
「外の方が暑いのかなぁ」
私は窓を開ける。
窓の外の空は、茜色に染まりかけていて、吹き込む風も少し涼しい。
「……少し散歩でもしようかな」
そう思い立ち、薄めのパーカーを羽織って扉を開いた。
すぅっと風が通り抜け、パーカーが翻り、髪が踊る。
私が1歩を踏み出す度に、ポニーテールの髪はピョコピョコ跳ねる。
イヤホンをつけてラジオを聴いていると、ちょうど知っている曲がかかる。
「あ、『夏色の恋』だ…」
「僕らの曲が、どしたの?」
私は立ち止まって振り返る。
「あっ、涼さん…」
「なんだ、ことねか」
「え何ですか、そのガッカリした、みたいな言い回し」
「嘘だよ、むしろ逆。君で嬉しい」
「なっ……」
私はその一言に問答無用で顔を赤くし、ふいっとあさってを向いた。