暁の夕暮れ ~夏の章~

「…きれいだね、夕焼け」

「はい。…真っ赤」

 小さなベンチに、2人で腰掛けている私たち。

「あ、君の髪飾り、夕焼け色」

「確かに、そうでしたね」

 そう言って私は髪飾りに触れる。

「…距離、近いね」

「えっ」

 1番、気にしたくなかったのに…。

 少し手を動かせば、触れられる距離。

「……ねぇ、キス、しても…いい?」

「えっ(2回目)」

 どうして!?

 今の会話のどこから“キス”っていう単語が出てきた訳?!

「あ、注意。君に拒否権ないから」

「えぇぇぇっっ!?」

 いや、ひどいっ!それこそないっっ!!

「なんでですか」

「かわいいんだもん」

「それ理由になってないです」

「いいでしょ?」

「ダメでs……っ!」

 チュッ、と耳元でリップ音がする。

「……っっ!!」

 嫌だっ、不意討ちは嫌いっ!

 実際に触れられた頬が、少し熱い。

「───涼、さん…」

「ん、どしたの?」

「─────…はぁ……」

 本当は、『恥ずかしいです。やめて…』って言おうと思っていた。

 でも、無駄な気がして、言う気が失せた。

 私の顔、きっとすごく赤いんだろう。

 夕焼けの、空の色みたいに。

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