だれよりも近くて遠い君へ
  -ピコン

LINEの音がイヤホンに流れた。

『どうだった、検診』

さくからで、送られてきた文はタイミング最悪。

私も気になるよ。
さくに教えられる答えを私は生憎持ち合わせていない。

『しらない、いつもどおりなんじゃないの』

こっちだってわかんないんだけど、聞いてこないで。

『そうか、わかった』

スマホの通知の音を切ってから、流していた音楽を止める。
静かなところに行きたい。ボーっとできるようなところ。
誰とも繋がりがないようなそんなところ。

私は特に行く当てもなくただただ病院の外へ出る。
大きな木を見つけた。力強く葉を目一杯広げている。
その下に行って木陰に入り、目をつぶる。

こんなに不安になってバカみたいだよね、今の私は変だよね、こんなの私じゃないよね......って自分に言い聞かせる。

深い深呼吸をしてから、ゆっくりと目を開く。

大丈夫、大丈夫、だいじょうぶ

まだ私はうまくやれる。

言い聞かせて凪沙さんがいるであろう病院の中にもどった。

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