だれよりも近くて遠い君へ
思っていたとおり凪沙さんはオロオロしながら私を探していた。
遠くから見てもはっきりとわかるくらい。

「なーぎーさーさん!!!」

後ろからゆっくりと近づいて驚かせる。
凪沙さんは大げさなくらいに、ビクッと肩を上げてこっちを振り返る。

「は~る~」

 ーーー ギュッ ーーー

「ウギャァ」

思わず声が出てしまうくらいに強い力だった。

「な、凪沙さん!?そんなに驚いたの?ごめんごめん」

「どこに行っちゃったのかと思った~」

見ると凪沙さんは目に涙を溜めている。
強い力で抱きしめてきているわりに、腕が震えているような気がする。
どうしたんだろう。
なんか変じゃない?

「なんかあったの?そんなに慌てて」

「いいえ、何もないわ。大丈夫よ。大丈夫」

「そっか、ならいいんだけど」

全然良くないよ。なんで目、逸らしてるの?
聞いて欲しくないことだったりするのかな。
だったらもういいよ。ちゃんとこれ以上聞かない。
だって私、物分かりがいいんだからね。

「そうよ。じゃあ帰りましょうか」

私達はそれからなんの言葉も交わすことなく病院を後にした。
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