マリンブルーの囁き
きっとこの人は最初から私と映画なんて行く気がなかったんだ。
初めから、私を此処に連れてくるのが目的だったんだ。
全てがこの人の描いたシナリオ通りで、全てがこの人の思惑通りに進んでいた。
想いを寄せていた人の腕の中に居るというのに、少しも胸が高鳴ることはなく、それどころか軋むような痛さを伴う。
抱きしめられたことに悲しくなって、ベッドに押し倒された時にはもっと悲しくなった。
「…俺、これ嫌いなんだよね」
何度も塗り直した赤い紅が、無機質な紙に無残にも拭い取られていく。
頑張って巻いた髪はシーツの上に散らばり、ぐちゃぐちゃに絡まる。
頭を悩ませて選んだワンピースは呆気なく剥ぎ取られ、ベッドの下に無造作に放り投げられた。