マリンブルーの囁き



パタン、ドアの閉まる音を背に聞きながら視線だけで辺りを見渡してみる。
夏向以外の男の人の部屋に来たのは勿論、初めてのことだった。


ローテーブルの上には空になったペットボトルとリモコン類が無造作に置かれていて、その周りに散らばっている雑誌とCD。
壁には今人気のロックバンドと、有名なサッカー選手のポスターが貼られている。


必要最低限の物しかなく、いつも綺麗に片づけられている夏向の部屋とは正反対の光景が広がっていた。





「…瑠璃ちゃん」


私を呼ぶ声にほんの一瞬トリップしていた意識が戻ってくる。


いつの間にか私と対面するように立っていた先輩は、私が返事をするよりも先に、一歩こちらへと距離を詰めた次の瞬間、私を掻き抱くように引き寄せた。



「……、」


驚きで目を見開いたのも束の間。

ああ、そういうことかと妙に納得している自分が居た。

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