愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
引越しを終えた日、俺たちはスマホで両親に連絡をした。

【咲花とは別れない。結婚する】

メッセージを送り、返信も着信も待たず、ダイニングテーブルにスマホを置いた。咲花も同じようにした。
すぐさま咲花のスマホは鳴り響いたけれど、咲花はスマホにクッションをかぶせて、俺に向かってにっと笑った。これが俺たちの決めたこと。

それから、ふたりで新たに移り住んだ街を探検にでかけることにした。
引っ越したばかりで家には何もない。今日は駅前で夕食を摂るつもりだ。
徒歩五分で駅前だ。小さな商店街があり、駅周辺はそれなりに栄えている。チェーンのファミレスやファストフード店はひと通りあるようだ。

「佑、佑、あれ!」

駅前の複合施設内を散策していると、咲花が声をあげた。

「佑、あれ得意でしょう?取って、取って」

見ればユーフォ―キャッチャーが数台置いてある。中には猫のキャラクターのクッション。

「咲花、ああいうの好きだったか?」
「佑が取るところが見たいの。佑も傑も上手なんだもの」

確かに高校の頃、傑と一緒にユーフォ―キャッチャーにはまったことがあった。俺も弟も凝り性なのでうまくいかずムキになってしまい、当時は研究しマシンの目利きもプライズを取る技術もかなり上達した。
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