愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
「確率機ではなさそうだ。アームの力がどのくらいか……、景品がでかいからな」
「駄目ならいいから。ね、一回だけ」

そんなふうにねだられ、ついやる気に火がついた。久し振りだけれど、咲花のリクエストならやってやろう。
コインを入れ、ボタンを押して操作する。一度目でアームにさほど力がないことはわかった。しかし、うまくタグを引っ掛けて転がせば、重みで入るだろうと検討をつける。

結果、三回目のチャレンジでクッションを落とすことに成功した。一応、ワンコインで取れたことになる。

「やった!すごいすごい!」

咲花はクッションを取り出し、その場でぴょんぴょん跳ねて無邪気に喜んでいる。

「高校の時、池袋で偶然会ったじゃない。その時も取ってくれたよね。覚えてる?」
「そんなこともあったかな」
「あったよ。私、友達といてね。佑と傑がひょいひょい景品を取ってくれるから、友達みんなキャアキャアはしゃいじゃって」

言われて見れば、そんなことがあったと思いだす。
あれ?
でもあの時咲花はあんまり楽しそうにしていなかったような気がする。
別れ際はむすっとして見えたような。

「実はあの時、最後の方はちょっと面白くなかったの。佑、私の友達に親切過ぎるんだもの。ほしいってねだられたらあっという間に取ってあげてさ」
「それは、咲花の友達だからだろ?咲花の株をあげたかったんだよ」

俺が笑うと、咲花も苦笑いした。

「わかってますよう。でも、あの時は面白くなかったの。佑は私にだけ親切にしてほしかったんだもの」
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