愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
「何をしにきたの?」

歩み寄り、立ったまま見下ろした。父が先に立ち上がる。

「どの口がそれを言うんだ!」

突然の怒鳴り声にエントランスを訪れていた一般客が振り向く。私は狼狽して、なるべく小声で制止した。

「やめて。ここは会社よ」
「辞めればいい!」
「馬鹿なことを言わないで」
「馬鹿はどっちだ、親に向かって!おまえを嫁がせるところはもう決めてある。仕事は今日にでも辞めろ!」

父の場を顧みない怒声と態度に、私ははらわたが煮えくり返るという表現を身をもって理解した。
この人は私と話し合う気で来たんじゃない。親の威厳を振り回し、言うことを聞かせにきたのだ。

がっかりしたといえばいいのだろうか。実の親に対してこんな感情を覚えたくはなかった。だけど、言わなければならない。
私は胸を張り、決然と口を開く。

「私は佑と結婚します。ふたりで決めたことだから、お父さんとお母さんには関係ないことです」
「咲花!」

母が悲鳴のような声で私を呼ぶ。
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