愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
夕食が部屋に運び込まれる頃には、咲花も目覚めた。

「たくさん動いてたくさん寝たからお腹空いたわ」

お腹が空いたと言う時の咲花は本当によく食べる。

「足りなかったら別に刺身の盛り合わせでもつまみでも頼むから言ってくれよ」
「あのねえ、佑、私がどれだけ食べると思ってるの」
「かなり食べる」
「体重の増え過ぎもよくないってお医者さんに言われてるんだから、そんなに食べません」

などと言いながら、咲花は出された料理をぺろっと平らげ、ごはんはお替わりし、デザートのあんみつは俺の分まで食べた。
赤ん坊のいるお腹以外はどこも肉がついていないというのに。食べた分はどこについているのだろう。
不思議に思いつつ、幸せそうにあんみつを頬張る咲花を見ていると、俺もまた幸せなのだと気付くのだった。

その晩はいろんなことを喋りながら眠ってしまった。
主に子どもが産まれるまでにやることと、産まれてからやること。事務的だが、語り合っているとわくわくするような内容だった。

夜半、俺はふと目覚めた。冷房の効いた室内は、少し乾燥する。水でも飲もうかと首を巡らせ、隣の布団に咲花がいないことに気づいた。
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