電話のあなたは存じておりません!
「ハハ、大丈夫だよ。ここはそんなに畏まった店じゃないし、個室だから気兼ねなく食事できるよ?」

 ーーそれは確かにそうかもしれない。

 窓の外には夜が広がり、キラキラと光の粒が散りばめられている。まるで暗い藍色の海に沈んだ宝石箱のようだ。私は窓の側まで歩み寄り、暫時その景色に目を奪われた。

 ーー綺麗……。

「気にさせたみたいで、ごめんね?」

 ーーえ。

「でも味はどれも絶品だし、芹澤さんならイタリアンかなと思ったからさ」

「それは……当たりです」

 私は彼へと振り返り、ソファー席に近付いた。

 和洋中、どれも好きだけど、中でも断トツに食べたくなるのはイタリアンだ。

 ーー和希ともよく行ったし。

 来栖さんに促され、ソファー席に腰を下ろした。テーブルに置いたメニューを渡されてオーダーを決める。

 私はふんだんにイクラを使った和風パスタを、来栖さんは明太子のクリームパスタを頼んでいた。お酒を扱ったお店なので、飲むかどうかを勧められたがやんわりとお断りした。

「あの電話は本当に間違いだったんですか?」

 ウェイターさんが去ってから私は本題を切り出した。

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