一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
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拓海を見送るために外へ出ると、いつの間に降り出したのか、空は霧雨で白く煙っていた。細かい雨が傘の中にふんわり舞い込む。傘を差しても意味をなさないが、停めてある車までの間、拓海と一本の傘を分け合った。
「ごちそうさま。すごくおいしかったよ。それに、楽しかったしね」
運転席に乗り込んだ拓海が、パワーウインドウを下げて微笑む。
「私のほうこそ、今日はありがとうございました」
コンビニでのゴミ事件も祐介の救急車事件も、拓海がいてくれて本当によかった。三人で食べたすき焼きがおいしかったのも、拓海の存在があってこそだろう。
実花子にはめったにしない部活の話を楽しそうにする祐介を見られたのもそう。今日はいろいろあったが、終わりよければすべて良しだ。
「あれ? おかしいな……」
それじゃと、実花子が車から少し離れたタイミングで拓海が計器を見て首をかしげる。車になにか不具合でもあっただろうか。