一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~


「どうかしましたか?」


近づいて窓から車の中へほんのちょっぴり顔を突っ込んだ瞬間、実花子は不意打ちで唇を奪われた。軽く触れるだけで離れた拓海は、目を見開いたままの実花子に笑顔を向ける。


「ごめん、ちょっとしたいたずら心」
「……え?」
「それじゃ、おやすみ」


ポカンとしている実花子を置いて、拓海はエンジンを掛けて走り去ってしまった。

今のなに……。

しばらく呆然としたあと、胸の中がじわじわとあたたかくなる。細かい雨が柔らかく降り注ぐ中、拓海と触れた唇に指先を当てて、実花子は車のテールランプが遠くに消えるまで見送った。
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