一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
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いつもより少し早く着いた会社には、まだ僅かな人の姿しかない。挨拶を交わしながら自分のデスクへ着くと、どことなく違和感を覚えた。目に入る周りの景色が、なにか違う。
その感覚の出所を探りながら席に着く。そしてそれは、今一番避けたい場所に目を向けたときにわかった。
社長室だ。拓海が臨時的に使っていた部屋。
その部屋のガラス窓にあったレモンイエローのブラインドがなくなっていたのだ。
それだけではない。実花子のデスクから見える部屋の中に拓海の気配がなくなっていた。拓海本人ではなく、いた痕跡が。
部屋の中にはデスクや応接セットなどすべてが取り払われ、なにもない空間になっていた。
――嘘。どうして。
「椎名社長、いつの間に引き上げたんだ? 上原さんも手伝ったのか?」
呆然としている実花子に、同じ部署の同僚が声を掛ける。
実花子は拓海の婚約者だと思っているから知らないはずはないと、尋ねるのは当然のことだった。