一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
「上原さん?」
「あ、いえ、私は……」
「そっか。うちとの経営上のすり合わせが済んだってことか」
「そう、ですね」
拓海は実花子の前から、すべての存在を消していなくなった。
今日、顔を合わせたらどうしよう。どんな顔をしたらいいだろう。それが全部、杞憂に終わったことになる。
「おはよう、実花子ちゃん。ねね、椎名社長の部屋、どういうこと?」
出勤してきた千沙も、当然ながら実花子に同じ質問をぶつける。あとから続々と出勤してきた人たちも、空っぽになった部屋を見て、口々に「どうしたの?」「いつの間に?」と囁き合っていた。
「実花子ちゃん? ……どうかしたの?」
千沙が実花子の腕を掴んだ。そうされて、彷徨っていた意識が千沙へ戻る。
「……あ、ううん。なんでもない」
「なんでもないって顔じゃないんだけど」
そう言われると困る。
「私、午後は外部研修に行かなくちゃならないから、お昼は無理だけど、夜うちに来て。ね? いい?」
千沙は何度もそう念押し、実花子の背中をトンと叩いて自分のデスクへ向かった。