一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
それによると職務内容が変わる人も中には出てくるが、社員の雇用はこのまま継続していくらしい。今と変わらずここで働けるのなら実花子にとってなんら問題はない。ホッと胸を撫で下ろした。再就職二ヶ月にして、再び就活なんて気が重くなるだけだ。
「では、みんなにトレンダーズクリエイトの社長を紹介しよう」
岡野の掛け声で、ドアの向こうにいたその人物が悠然と姿を現す。
業界内が厳しくなりつつある状況のなか、飛躍的に伸びている会社の社長とはいったいどんな人物だろう。ちょっとした興味を抱きつつ、前に立つ人の頭を避けるようにして首を伸ばす。
俯き加減で入室してきたその人が、ゆっくりと顔を上げた。
「えっ!?」
思わず声を上げた実花子に、みんなの視線が一斉に突き刺さる。そしてそれは、たった今入ってきたばかりの人物も例外ではなかった。
実花子が驚くのも無理はない。メディアテックを傘下に入れた会社の社長が、週末に実花子を悩ませた、あの椎名拓海だったのだから。
この前のカジュアルな装いとは違い、上質なダークグレーのスーツを華麗に着こなしていた。
実花子に気づいた拓海が目を見開く。