必ず守るから、だから、笑って


んー、こんなに広いはずなのに、あいてる席がひとつも見当たらないってどういうことだろう。


私が見つけるの下手なだけ?


困ったなぁ。


「あのっ!妃夢乃さんっ!」


自分の名前を呼ばれ振り返るとそこには数人の男の子がこちらを見ていた。


どうやら私を呼んだのはこの人たちみたいだ。


知らない男の子たちだけど、どうして私の名前知っているんだろう?


同じクラスじゃないはずだけど……。



どこかで会ったっけ?


まずい、思い出せない。




「あのっ。席、探してますよねっ!俺ら詰めれば座れるんでっ」



「うわぁ。どうもありがとう。だけどもう1人いるの」



「惺南さんッスよね!?大丈夫ッス!」


そういって名前も知らない彼らは2人分の席をあけてくれた。


私の名前どころか、一緒にいる桃優まで知ってるとは…。


周りがよく見えている人たちだなぁ。



そんな素敵な人たちの名前を憶えてなくてごめんなさい。



「ありがとう。じゃあお言葉に甘えさせてもらいます」


笑顔を浮かべ、そう伝える。


たとえ笑顔が偽物であろうとお礼はちゃんと言わないとね。



それなのになぜか顔が赤くなる男の人たち。


今、恥ずかしくなるシーンあったかな…。


普段、お礼を言われなれてなくて照れてしまったのだろうか。



うーん、それはなんとも非常識な人たちがいるもんだ。




それよりお腹がすいたし、私もなにか買いに行こう。



譲ってもらった席に腰を掛け、頬杖を突きながら辺りを見回す。


うん、オムライスの気分。



「ひーめ」


オムライスを買うため、席を立とうとした私を止めるように後ろから抱き着いてきたのは確実に桃優ではない。


「ひめ、ってなに?輝望くん」


「んー?希愛ちゃん苗字妃夢乃じゃーん。だからひめだよぉ」



なにそのあだ名。


それよりこの首に巻き付けている腕と頭に乗せた顎をどうにかしてほしい。


おかげで注目を浴びているし、席を譲ってくれた男の子たちもびっくりして目を見開いている。


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