皇女殿下の幸せフェードアウト計画
「ねえウルスラ、本を読む以外に部屋でできることといったら何があるかしら」

「……部屋の中で、ですか」

ふと本を読むのに飽いたイリス様は、外でワガママ皇女なんて呼ばれているのが嘘みたいに穏やかだ。確かに物言いが辛辣なこともあるけど、割と常識的な範囲のことしか言ってない。

多分一度ついちゃった印象と、勝手に作り上げられた『次の女帝なんだからもっとすごい人であってほしかった』っていう押し付けにうんざりしちゃった結果埋まらない溝ができてるんだろうなあ。

わかってる人はそれなりにいるんだけど、皇帝陛下を神聖視しちゃってる人の方が多いから埋もれちゃってるんだろうと思う。

「でしたら、刺繍やレース編みなどはいかがですか」

「レース編み……そうね、それもいいわね。糸を用意して」

「かしこまりました」

なんとなく、この小柄な姫様が窓辺でレース編みしている姿は可愛いんじゃないかなと思って言っただけだったんだけど、イリス様は殊の外、レース編みがお気に召したみたいだった。

それはもうワタシからすると羨ましいくらい器用にするする編んで行く。まるでその道のプロ並みだ。

糸が最上級品だから綺麗な仕上がり、なんてことは当たり前だけどそんなことはないので素直にこれはイリス様の実力だ。
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