皇女殿下の幸せフェードアウト計画
休日、レース作品を持って帰ったワタシを母さんは目を丸くして出迎えた。

そして経緯を聞いて、感激しておいおい泣いて、司祭様に即座に持って行った。

名前を伏してほしがっていたので、このことを知るのは母さんとワタシだけ。

でも尊いお方から、この寺院のために使ってほしい、売っても構わないと預かった旨を伝えれば、司祭様はすべてを理解しているのか優しく笑って祈りを捧げてくれていた。

作品の中には、子供たちにちょうどいい厚手のショールもあった。

(あ、これ……たまには他の糸で編んでみたいから安いのでいいから持って来いって言われて用意したやつだ)

綺麗なレースは売り物になるんだろう。

中には小ぶりのショールとかもあったから、巣立つ子供たちへの贈り物なのかもしれない。

売れるものばかりじゃなくて、実用的なものまで混じっている辺りが優しさなんだとワタシは思った。庶民の感覚とはちょっと違うあたりが、皇女様なんだなあって改めて思う。

ワガママで癇癪持ち、そう言われて城の人たちと繋がりを断ったイリス様だけど、民にはちゃんと目を向けている。

世間知らずで、優しい、民を思う皇女様。

ワタシが知っているその姿こそが、イリス様なら……これからも、誠心誠意お仕えしよう。静かにイリス様が落ち着いて過ごせる時間を用意しよう。

いつか、寂しい顔で外を見ないで済むような日が来るその時まで、ワタシだけでも味方でいよう。

気づいた時には遅いんだ、イリス様がこのままこの国から消えちゃわないようにしとかなくっちゃ。そんな日が来てからじゃ、遅いから。
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