皇女殿下の幸せフェードアウト計画
挿話 幼馴染ユゼフの証言


初めて彼女に会ったのは、確か私が五歳か六歳の頃だったと思う。

子供でさえも知っている、アルセイドという大国を盤石のものとした今なお我らに惜しみなく手を差し伸べてくださる偉大なる皇帝陛下のただ一人の娘。

そんな存在と会えるのだと両親に言われた時はとても嬉しかった。

すでにしょっちゅう顔を合わせていたルイーズも一緒に会えるだなんて、誇らしいと子供心に思ったものだ。

城の、皇族だけが使える庭に佇む彼女……イリス・アルセイディア皇女殿下は、こう言っては何だがただの女の子だった。

(思っていたのと違う)

庭に行く前に拝謁することが許された陛下の威厳、その一欠片すら持たない少女に子供心にがっかりした。

周りの大人もそうだったから、自分の感性は間違いではなかったのだろう。

実際言葉を交わしても、皇女殿下は『特別』な人間ではないのだとわかる。勝手なことだけれど、普通だとわかればわかるほど、失望してしまった。

(あんなに素晴らしい陛下が父親だとは思えない)

今にして思えば、なぜそんなことを思ったのだろう?

陛下を敬愛していたから?

周囲の大人がそうだから、当然のことだと思った?

どうして『特別』が続くと思ったのか、今ではわからない。
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