皇女殿下の幸せフェードアウト計画
逃げるように仕事があるからと茶会から去る際、あの子はどんな顔をしていた?

こちらの罪を、あの子にすべて押し付けてまるで自分は悪くないと振る舞う卑怯な大人である自分に反吐が出る。

(どうしたらいい)

何が賢帝だ、何一つ娘の心を知ろうとも、助けようともしなかった情けない父親ではないか。

リリスに睨まれたことを思い出す。

妹を守ろうとするあの子の方が、過ごした時間の長い俺よりもずっと『家族』じゃないか。

(過ごした時間)

それすら、下手をしたら……ないのではないかと、気が付いた。

ああ、苦しい。

今からでも間に合うのか。

一目惚れをした女性を、地位と引き換えに手に入れた弟の言葉が頭の中で繰り返される。

『僕も兄上も、お互い経過はともかく愛すべき相手をこの手に取り戻した。……では、憐れなるあの少女には、何があるのでしょうね……』

イリスには、父親がいるじゃないか。

そう言い切ってやれない。なぜなら、あの子はもう、皇帝としての余が皇女としてのあの子に見切りをつけたように、父親としての俺をイリスが諦めたのだから。

(今からでも、どうか)

改めることはできるだろうか。少しずつ、あの子を知ることができるだろうか。

こんな愚かな父親を、気づくことが遅かった父親を、許してくれるだろうか。

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