皇女殿下の幸せフェードアウト計画
お姉様が心配そうに私を覗き込んでいる後ろから、医師が姿を見せた。

「姫様」

「……大丈夫、少し頭痛がするだけだわ。鎮痛剤を頂戴」

「かしこまりました。あまり多用なさいませんよう」

「ウルスラはいる?」

「ここにおります」

「水を……それから医師を、お見送りして」

「かしこまりました」

喋っても頭に声が響くわけでもない。

さっきのことを思い出すと……そう、特に予言の『声』を思い出そうとするとあの声が響くような気がして頭が痛む。

まるで、私がそれを思い出すことを、私自身が拒んでいるみたいだ。

でも、『私』は知りたかった。

前世の私が? イリスが? ああもうどっちでもかまやしない。どっちも私だ。



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