皇女殿下の幸せフェードアウト計画
「イリスよ」

「……は、い」

「そなたにとっても辛きこととは思うが、……后については死んだものと思うてくれ。処断については今は明確には答えられぬが、皇族として恥ずかしくない振舞いをし、その日を待つように」

「……かしこまりました」

リリスにかけたものとはまるで違う陛下の無機質な声に、私も淡々と答える。

私がお辞儀をして退出しようとしても、皇帝陛下はこちらを見もしなかった。

ずきりと胸が痛んだ。

だけど、これでいい。

ここまでが、計画通りだったじゃないか。何を悲しむことがあるだろう。

皇帝陛下が、嬉しそうな顔でリリスに話しかけるあの姿が羨ましいだなんて。あれを見守れたらいいのになんて思っていたんだから、これが正しいのに。

フォルセティがこちらを見ていた気がしたけれど、私はもうこの場にいたくなくてさっさと踵を返して部屋を出た。

覚悟なんてとっくの昔にしたはずなのに、なんでか、涙がこみ上げてきそうだったから。
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