皇女殿下の幸せフェードアウト計画
「姫」
フォルセティの低い声が、私を呼ぶ。

真っ直ぐにこちらを見ている視線に、私はなにか応えなくちゃと口を開くけれど、何も声は出ない。

「姫、皇后陛下は、ご無事だ」

フォルセティの言葉に、私はただ頷いた。

 そうだ、未然に防がれた。お母様は取り押さえられた後に、騎士たちに連れていかれてしまっ。私はまだ、それを見ても動けなかった。

「……近いうちに、エイモンに話を聞き二人の処分を決めねばなるまい。フォルセティ、よくぞあれの行動を阻止してくれた」

「恐れ多きお言葉に」

「リリスよ、これよりは父の傍にいてくれるな?」

「……。陛下の、お心のままに」

物語のように、皇帝陛下の傍に、主人公二人が揃った。

それは喜ばしいことなのに、私だけがまるで蚊帳の外。
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