秘密の懐妊~極上御曹司の赤ちゃんを授かりました~
そこで人数合わせのために私に白羽の矢が立てられたのだが、……そういうのはちょっと遠慮したい。
昼休憩に入り洋食屋に向かう途中からこのお願い攻撃が始まり、もう何十回も「ごめんね」を口にしているというのに、沙季はなかなか諦めてくれない。
「今夜、用事は何もないんでしょ? だったらお願い! 相手が人数ぴったりじゃないと嫌みたいで」
先日迎えた誕生日で私は二十九歳になったけれど、未だ合コンというものに参加したことがない。人見知りもあり、そういうのに参加したいと思えず過ごしてきたからだ。
「ねぇ、穂乃果も彼氏いないでしょ? 一目惚れとかしちゃうくらい素敵な男性がいるかもしれないじゃない」
沙季が私の両腕をがしりと掴み、言い聞かせるように言葉に重みを乗せて訴えかけてくる。
けれど私は軽く息をついてから、そっと沙季の手を押しやった。
その訴えは私には効果がない。人数が男女で同じじゃないと嫌だとごねる相手を素敵だなんて絶対に思えない。
それに私には……、沙季にも誰にも言ってないけれど、お付き合いしている人がいる。
「穂乃果ったらぁ! 将来有望な医者だもん、私この合コンにかけてるの!」