秘密の懐妊~極上御曹司の赤ちゃんを授かりました~


「とりあえず食事をしようか」


翔悟さんの提案で、私たちはそれぞれにいくつか店名をあげていく。高級ブランドのお店が並ぶ落ち着いていてお洒落な通りに車が差し掛かったところで、「この前商談ついでに使った店の雰囲気がとても良かったな」と記憶を辿りながら出た翔悟さんのひと言から、行き先が決定する。

地下駐車場に車を停めて二人並んで地上に出た。「こっちだ」と告げて、翔悟さんが少し前に出た。

彼の背中へと向けた視線が、ゆっくり降下する。思わずじっと見つめたのは、彼の右手。手を繋ぎたい。浮かれた頭でそんなことを考えていたから、急に立ち止まった翔悟さんにぶつかりそうになる。


「どうかしたんですか?」


横から顔を覗き込みつつ問いかけてすぐ、質問の答えに自ら気がつく。歩いている通りの先、私たちから二十メートルくらいの場所にある呉服店の店先で、店員に見送られている姿に一気に心が冷えていく。

そこにいたのはヒルマ物産会長、翔悟さんの祖母。彼の女性関係に一番口出ししてくる人物だから、私の存在を快く思わないだろうことも簡単に想像つく。

気づかれませんようにとハラハラしていると、すっと、翔悟さんが私を背で隠すように小さく移動した。彼に庇われると同時に、前方から声がかけられた。

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