秘密の懐妊~極上御曹司の赤ちゃんを授かりました~
そのまま車のそばまで来るかと身構えるも、翔悟さんたちはその手前にある店の前で足を止める。何か言葉を交わした後、翔悟さんが扉を開けて、共に店内へと入っていった。
「亜裕子さんとは幼なじみだと聞きました」
力なく呟くと、会長のふふっと笑う声が勝ち誇ったように続く。
「えぇ、ふたりは昔からあんな感じです。翔悟も彼女には気を使わずにいられるようで、だからか少し前までは彼女と結婚することも了承していたと言うのに……まったく」
最後のぼやきには批難の響きが含まれていて、全ては私が元凶だと言われたような気持ちにさせられる。
「今のが本来のあるべき形です。翔悟とヒルマ物産の未来のためにあなたができる最良のことは何か、理解できたわね?」
唇をきつく結んで、何も言わずに勢いに任せて車を降りようとしたが、「そうそう」と会長の声に引き留められた。
「言っておきますが、今回の出張はヒルマ物産にとって非常に重要な意味合いを持っています。くれぐれも翔悟の仕事を邪魔しないように」
鋭く釘をさされ、わずかに目を閉じた後、私は車から飛び出した。