秘密の懐妊~極上御曹司の赤ちゃんを授かりました~

その勢いのまま翔悟さんたちが入っていた店の前まで進み、無機質でお洒落な外観を見つめる。店の中に乗り込み、どうして女性と二人っきりで食事をしているのかと泣き喚いてしまいたい。

でも、私にはないものを彼女はたくさん持っている。それは翔悟さんがヒルマ物産のトップに立った時、大きな支えとなるものだ。

さっきの会長の言葉から、翔悟さんが私と付き合う前まで彼女と結婚するものだと思っていたのだとしたら、あんなに仲が良さそうなのだから、彼女の方も同じように思っていたとしてもおかしくない。私が割って入って結婚の話がなくなったことで、もし彼女の機嫌を損ねてしまっていたら。力になれないだけならまだしも、翔悟さんの足を引っ張ってしまうかもしれない。

考えれば考えるほど、顔が強張っていく。お店からふわり漂ってきた食べ物に匂いに、再び吐き気を覚え、私は逃げるようにその場を離れた。



会長に出社しなくて良いと言われたが、別れた後、私はヒルマ物産へと向かった。しかし受付で呼び止められてしまい、私はそれ以上先に入ることを許されなかった。

会長は本気なんだと改めて実感し、このまま辞めるしかないんだという落胆と共に、私は帰宅した。

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