【完】溺愛したいのは、キミだけ。
受け取って濡れた部分を拭かせてもらったら、なぜか翠くんは無言のままこちらをじっと見つめてきて。


なんだろうと思って顔を上げたら、次の瞬間彼の両腕が伸びてきて、ギュッと強く抱きしめられた。


「……ひゃっ!」


驚いて、思わずハンカチを床に落としてしまった私。


「み、翠くん!? あのっ……」


突然のことすぎて、一体何が起こっているのかよくわからない。


「あいつがヒナに触ってたから、すげぇムカついた」


「え……?」


ムカついた? どうして翠くんが。


「ヒナ、警戒心なさすぎ。簡単に他の奴に触らせんなよ」


耳元で聞こえる翠くんの声はどこか余裕がなくて。自分の胸の鼓動がますます加速していくのがわかる。


どうしてそんなこと言うの……?


「なんで最近いっつもあいつと話してんの?」


不機嫌そうに問いかけてくる翠くん。


あいつって、倉田くんのことだよね?


「そ、それは、隣の席だから、普通に……」


「ヒナが他の男と楽しそうにしてたり、笑いかけてんの見ると、すげームカつく」


翠くんがギュッと腕に力を込める。


「ムカつくんだよ……」



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