【完】溺愛したいのは、キミだけ。
思いもよらない彼の発言に、胸の奥がキュッと苦しくなった。


ねぇ、なんで?


それってなんかまるで……ヤキモチみたいだよ。


だからさっきからずっと怒ってたのかな? 倉田くんに対して冷たい感じがしたのも、そのせい?


翠くんが私のことでヤキモチを焼くなんて、なんだか信じられないよ……。


苦しいくらいに強く抱きしめられて、身動きが取れない。


翠くんの心臓の音と、自分の心臓の音が混ざって聞こえて、もうどちらの音なのかわからない。


ダメだよ、こんなの。


ドキドキしすぎてどうにかなっちゃいそう。


――キーンコーンカーンコーン。


するとその時、ちょうど昼休みの終わりを告げるチャイムの音が鳴った。


「あ、あの……っ、チャイム鳴っちゃったよ」


翠くんが離してくれないので、おそるおそる口を開く。


すると彼は腕を離すどころか、さらにギュッと力を込めて。


「知ってる。でも、まだ離したくない」


「……っ」



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