【完】溺愛したいのは、キミだけ。
するとその時ヒナがふいに、彼女の口を抑えているほうとは反対の手に、自分の手を添えてきた。


そしてそのままなぜか、ギュッと俺の手を握ってきて。


……ちょっと待て。これって、無意識にやってんのかな。


もしそうだったとしても、ヒナのほうから俺に触れてくるなんてめったにないから、めちゃくちゃドキッとしてしまう。


同時に胸の奥から愛しさが込み上げてきて、俺の中で抑えていた何かが外れたような気がした。


そっと彼女の口元に当てていた手を離し、包み込むようにうしろからギュッと抱きしめる。


その瞬間、またビクッと体を反応させたヒナ。


どさくさに紛れてこんなことする俺は、ズルい奴かもしれない。


でも今だけ、少しだけ。


ヒナのこと、俺のものみたいにしていたい。


ヒナはじっとしたままそれ以上動かないし、抵抗もしない。


背中越しに伝わる鼓動。鼻をかすめる彼女の甘い匂いに、ますます理性が危うくなっていく。


抱きしめる腕にさらにギュッと力を込めた。


もっと俺のこと意識して。俺にもっと、ドキドキして。


俺のことしか考えられなくなればいいのに。


ヒナは今、何を思ってる……?



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