【完】溺愛したいのは、キミだけ。
――キーンコーンカーンコーン。


するとそこで、昼休みの終わりを告げるチャイムの音が鳴って。


それに気づいたカップルが声をあげた。


「あ……チャイム鳴っちゃった」


「あーもう、いいとこだったのに」


「戻ろっか」


「仕方ねぇなぁ。そんじゃ、続きは俺ん家でしよーね」


「もうやだぁ、ユウくんったら」


――ガラガラッ。


ドアが開く音がして、部屋から出ていったらしいカップル。


ふぅ、やっといなくなったか。


俺はそこでようやくヒナから腕を離した。


「はー、焦った。こんなとこで何やってんだよなぁ、あいつら」


なんて、何もなかったようなフリをして呟いたけれど、いまだに心臓がドキドキうるさい。


もちろんそれは、あのカップルのせいじゃなくて。


「ごめんな。見つかったらやべーと思ってとっさに隠れちゃった」


俺が声をかけると、背を向けたまま答えるヒナ。


「う、ううん、大丈夫っ」


そのまま二人で教卓の外へと抜けだして、立ち上がる。


そこでチラッとヒナの顔を確認したら、なんと、彼女の顔が驚くほど真っ赤になっていた。


あれ? これって……。



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