【完】溺愛したいのは、キミだけ。
目が合った瞬間、ドキッと心臓が跳ねた。


ど、どうしよう。翠くんに話しかけられちゃった……!


「み、翠くん……っ。どうしたの?」


「あー、ちょっと忘れ物取りに来た」


翠くんは涼しい顔でそう答えると、自分のロッカーまで歩いて行って、中からサッカー部のロゴが入ったジャージの上着を取り出す。


そして今度は私のほうまで歩いてくると、再び話しかけてきた。


「掃除当番なの?」


「え、えーっと……っ」


わあぁ、なんか緊張する。翠くんとこんなふうに面と向かって話すのって、初めてかも。


思わず返事を濁したら、翠くんはその瞬間、黒板横の壁にかけてあった掃除当番の札にちらっと目をやった。


「あれ? っていうか今日、涼川の当番じゃなくね? そこに“桜木”って書いてあるけど」


ウソ、気づかれちゃった……。


翠くん、意外とよく見てるんだなぁ。


「あ、うん。そ、そうなんだけど、桜木さんは用事があるみたいで……っ」


「ふーん、なるほどね。代わってあげたってやつか」


「……う、うん」



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