魔女の紅茶
え。
「あ?」
頭の中で吐き出した自身のものと、前方でゼイン様の吐き出したものとが重なった。
「クルルって、おま、こいつかよ」
「ええ。とても可愛いでしょう?」
僕が抱いた疑問をゼイン様がさらりと吐き出してくれたので、お二人の会話に黙って耳を傾ける。十日間、ゼイン様と共にお食事を運ぶもその姿を拝見した事はなかった。洞窟に住んでいるぐらいだから、てっきりクルル様は魔獣なのだろうなと思い込んでいたのだけれど、まさかのふわふわでもふもふだったとは。いや、うん、可愛い。
「っゼイン様!」
などとほんわか雰囲気で事を終えさせてもらえるほど竜人という種族は優しくはないらしい。ぴりりと肌を撫で付けた尋常ではないそれに、素早く護身用ナイフを手繰り寄せ、投げる。
「ほぉ」
ざしゅっ!と立派な木の幹に投げたナイフが刺さり、難なくそれを避けた竜人は、ゼイン様に向けていた視線を僕へと移した。
「……人間にしては、と思ったが……なるほどな、お前、禁忌の子か」
くつり、あからさまな嘲笑が鼓膜を揺らす。
禁忌の子。正しくは、禁忌の子から産まれた子、だけれど、全ての種族が取り決めた、全ての種族に共通する、ドラゴンと交わるという禁忌を犯した事実があれば詳細などどうでも良いのだろう。だから、竜人族に関わりたくなんてなかったんだ。彼らは、彼らの眼は、種族の血を見分けられるらしいから。
「親を、喰い殺したのか」
「っ」
「可哀想に。人間にもドラゴンにもなりきれない半端なまま、それでも見目にならい人間として生きたせいで、ドラゴンの飢餓に堪えられなかったのだろう?」
「……」
「長い時間、人間を喰わないでいるとドラゴンは自我を失うからなぁ」
何もかもお見通しだと言わんばかりの物言いに、ぎちりと歯が鳴る。うるさい、黙れ。僕は僕だ。毅然とした態度でそう言いたいのに、喉に張り付いた言葉はぴくりとも動かない。