お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~

 忙しい日々が続いているけれど、拓海との生活は順調に続いている。

 拓海は、「せっかく一緒に住んでるんだから、夏美との時間を大切にしたい」と言って、スケジュールをやりくりして、少しでも一緒にいられるよう時間を作ってくれるようになった。

 そして時間があれば、対局を挑んでくる。

 何事にも一度取り組んだら全力投球してしまう拓海は、仕事の合間にアプリで囲碁の対局をしたり、棋譜を読んだりしているらしい。順調に実力をつけていて、私との対局でも、なかなかいい勝負をするようになっていた。


「あー悔しい。どうしても夏美に勝てない!」

 玄関のドアが閉まり、拓海の声がする。今日は夕食後に一局勝負をして、負けた方がアイスをおごると約束をしていたのだ。結果はもちろん私の勝ち。拓海は近くのコンビニまで行って、一番値段が高いアイスを買ってきてくれた。

 こはるに纏わりつかれながら、拓海がリビングに入ってくる。ところがこはるは私の姿を認めると、ぷいっと顔を背けて拓海の寝室に行ってしまった。


「こはる、相変わらずだなぁ」

「そうなんだよね」

 一緒に暮らしはじめて結構経つというのに、いまだにこはるは私に懐いてくれない。


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