お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~
「それじゃ、お義父さまとお義母さまは恋愛結婚なんですね」
「うふふ、そう言われるとなんか照れちゃうわね」
照れ笑いを浮かべるお義母さまは、なんだか可愛らしい。
「さあできた。どうかしら?」
「……これが、私?」
姿見に移っているのは、風流な浴衣を美しく着こなした大人の色気を纏う女性だった。髪は高めの位置で結って、一輪の白い花を模したかんざしが差してある。
私も知らなかった私を引き出してもらえたようで、自然と気分が高揚してくる。
「月下美人のかんざしよ。夏美ちゃんのイメージに合わせて取り寄せたの。すごくよく似合ってるわ」
お義母さまも出来上がりに満足しているみたいだ。
「これは、拓海も惚れ直しちゃうわね」
惚れ直すうんぬんはともかく、せっかくだから拓海も気に入ってくれたらいいな。
「さあ、拓海のところへ行きましょう!」
お義母さまに後ろから肩を押され、拓海が待つリビング向かう。
「拓海、できたわよ。どうかしら?」
お義母さまにはいっと背中を押され、ソファにかけてくつろいでいた拓海の前に立たされた。拓海は目を見開いたまま、何も言わずに私を見上げている。
拓海はどう思ってるんだろう。無言で凝視されて、いたたまれなくなってくる。