お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~

「それじゃ、お義父さまとお義母さまは恋愛結婚なんですね」

「うふふ、そう言われるとなんか照れちゃうわね」

 照れ笑いを浮かべるお義母さまは、なんだか可愛らしい。


「さあできた。どうかしら?」

「……これが、私?」

 姿見に移っているのは、風流な浴衣を美しく着こなした大人の色気を纏う女性だった。髪は高めの位置で結って、一輪の白い花を模したかんざしが差してある。

 私も知らなかった私を引き出してもらえたようで、自然と気分が高揚してくる。

「月下美人のかんざしよ。夏美ちゃんのイメージに合わせて取り寄せたの。すごくよく似合ってるわ」

 お義母さまも出来上がりに満足しているみたいだ。

「これは、拓海も惚れ直しちゃうわね」

 惚れ直すうんぬんはともかく、せっかくだから拓海も気に入ってくれたらいいな。


「さあ、拓海のところへ行きましょう!」

 お義母さまに後ろから肩を押され、拓海が待つリビング向かう。

「拓海、できたわよ。どうかしら?」

 お義母さまにはいっと背中を押され、ソファにかけてくつろいでいた拓海の前に立たされた。拓海は目を見開いたまま、何も言わずに私を見上げている。

 拓海はどう思ってるんだろう。無言で凝視されて、いたたまれなくなってくる。


< 138 / 223 >

この作品をシェア

pagetop