お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~
「拓海ったら、急に夏美ちゃんに浴衣を着せたいって言い出すんだから。慌てて用意したのよ」
「えっ、これ私が着るんですか?」
「もちろんよ」
そう言いながら、お義母さまが私に浴衣を羽織らせる。
「うん、夏美ちゃんは背もあるし、大人っぽい和風美人だからとてもよく似合ってるわ」
「そんな……」
和風美人だなんて、そんなこと言ってもらったのは初めてだ。
「さあ、着付けをはじめましょう」
着付けだけでなく、ヘアアレンジや浴衣に合わせたメイクまでやってくれるという。
着付けをしてもらいながら、初めてゆっくりお義母さまと話をした。
いかにも良家の子女といったイメージのお義母さまだけれど、昔からこまごまとした作業が好きで、ヘアメイクやスタイリストの道に進みたいと思っていたこともあったらしい。
「わがまま言って専門学校に通わせてもらっていたんだけど、親の命令でお父さんとお見合いして……。私の一目惚れだったの。どうしてもお父さんと結婚したいって思ってしまって」
全ての夢を投げ打ってでも、一生お義父さまのそばにいたいと思ったのだと言う。気持ちを打ち明けると、お義父さまも同じ気持ちだった。
そこから結婚までは、本当にあっという間だったそうだ。