お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~
加藤さんとのお見合いの席で、拓海に助けられたのは偶然だと思う。その後、おじさまが必死で探し出したおかげで、拓海は榊物産にも来ることができたのだ。拓海の方から私との再会を仕組んだとは思えないし、拓海がそんな人間だとは思えない。
何度か私と顔を合わせるうちに、私を契約結婚の相手にと考えるようになったのだろう。
「あいつ……許せないわ。夏美ちゃんのこと本気で幸せにするって言ったから、婚姻届だって用意してあげたのに」
「拓海がそんなこと言ったんですか?」
「ええ、間違いなく私に言ったわ。だから私も彼のことを信用したのよ」
本当だったら飛び上がるほど嬉しい話だけれど……。
「それで、実際のところはどうなの? 夏美ちゃんだって祖父江さんにお弁当作るとか言ってたし、まんざらでもなかったんじゃないの?」
「まんざらでもないどころか……、私はもう彼のことを好きになってしまったんです」
一度自覚してしまえば気持ちは膨らむ一方で、たとえ偽物の関係でもいいから、このまま拓海と夫婦を続けていたいって思ってしまう自分もいる。
「でも、本当にこのままでいいのかなって悩んでもいるんです」
私は佐奈さんがうちに来たことや、その時に交わされた会話や私の気づき、猫のこはるのことなどを一通り綾さんに話して聞かせた。