お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~

 場所を変えて行われた披露宴は、かなり盛大なものだった。

 新郎側の家業は弁護士、新婦側の家業は医療関係ということもあって、招待客もかなり多く、老舗ホテルの一番集客できるホールを貸切って行われた。

 途中の歓談の時間では、新郎新婦ふたりの結婚式というより、異業種交流会のような雰囲気も感じたけれど、式の終わりに新婦からの手紙が読み上げられると、多くの人々が涙に誘われた。

 可愛らしいパステルブルーのドレスに身を包んだ佐奈さんが、湊人さんに支えられ、両親への感謝の気持ちを綴る。彼女が本当に家族から愛されてきたことがわかる、素敵な手紙だった。


 二人が寄り添うようにして立っている壇上を、拓海は片時も視線を逸らさず見ていた。ほんの少しだけ目を潤ませて。まるで、佐奈さんの姿を焼き付けるように。

 拓海のそんな姿を見て、やはり私の決断は正しかったのだと確信した。

 湊人さんと佐奈さんの結婚式が終わった今、私と拓海が夫婦でいる理由はない。

 拓海の気持ちが佐奈さんにある以上、私はそれを無視できないし、何より『どちらかに他に好きな人ができたら別れる』という契約を破るわけにはいかない。

 この式が終わったら、拓海に離婚届を手渡そう。もう拓海を解放してあげよう。

 佐奈さんと結ばれることはなかったけれど、いつか拓海にもまた心から愛せる人が現れたらいい。


 まだ胸は痛むけれど、私もようやく彼の本当の幸せを願えるようになってきた。

 そして私も、前を向こう。いつか自分の教室を開けるよう、仕事も、その準備も頑張ろう。たとえ拓海が隣にいない未来でも、ちゃんと自分の足で立てるように。


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