お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~

 無事披露宴も終わり、新郎新婦と写真を取ろうと列に並んでいる人、二次会へ向かう相談をしている人、知り合いを見つけ話し込んでいる人たちが、式場のロビーにたむろしている。

 私はその場所から離れ、ある人の姿を探していた。

人の輪から外れた場所に、あまり目立たないようにして人待ちをしている男性がいる。私に気がつくと、軽く手を挙げた。

「夏美ちゃん、久しぶり」

「聖司さんお待たせしてすみません」

 また招待客に見つかって、聖司さんが取り囲まれたりしたら敵わない。

奥まった場所にある、観葉植物で半分隠れている待機用のソファーに、聖司さんと向かい合わせで腰かけた。


「それで、話って?」

「以前言われた、囲碁教室のことです」

 聖司さんに誘われてアルバイトとして参加した囲碁教室で出会った男の子や夏祭りで偶然再会した元教え子の茉莉花ちゃん。彼らとの出会いのおかげで、私にとってやはり囲碁はかけがえのないものだと思った。

 そしてなにより、拓海が囲碁の楽しさを思い出させてくれた。新たな一歩をなかなか踏み出せない私を、後押ししてくれた。


「やはり再開を目指そうと思います」

「そう、それで俺はなにをしたらいいの?」

 いかにも聖司さんらしい、簡潔な物言いで彼は話を進めようとする。

「違うんです。聖司さんに助けてもらいたいわけじゃなくて、今日はただご報告に――」

「……夏美?」

 低い声で、誰かが私の名前を呼ぶ。

振り向くと、拓海が早足でこちらに来ようとしていた。……その顔が、なんだか怒っているようにも見える。


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