好きなんだから仕方ない。
危険が近付いているのなら一番近くにいなきゃいけないのに。命を落としても守らなきゃいけないくらい、俺が命を落としても生きていてほしいくらい大切な存在なのに。

「また守らなきゃって考えてる?」

「それが私の役目です」

「私が嫌だと言っても?」

彼女の言葉に振り返った俺の手を、彼女は握りながら俯いていた。あぁ、そうか。もう俺に守られる必要も無いんだ。城にいた頃の放っておけないか弱かった彼女とは違う。自分で好きに生きられるようになったんだ。
俺の存在価値が無くなってしまった。彼女を守る必要が無くなったと言うのなら何のために生きれば良いんだ。何をして生きれば良いんだ。
彼女を守る。それが俺の生きる希望だった。彼女が本当に助けを必要としなくなるまでそばにいる。でも今はどうだ。パルドメールという男がそばにいて、子供たちに囲まれて。俺が入る隙間なんて無いくらい、満たされた生活をしているじゃないか。
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