好きなんだから仕方ない。
まだ自由に体を動かせない中で何度目かの夜を迎えた。きっと、何もない静かな日々にすっかり油断していたのだと思う。まさか、思いがけない怪我をするなんて。

「っ!?・・・っ」

「嘘・・・?クロエラ!?クロエラ!!」

「ヅヌダクさん、エイミアを頼みます。クロエラさん、少し痛みます。生きたければ何でも良い。意思を強く持ってください」

「エイミア様!落ち着いてくだされ!大丈夫です!クロエラなら大丈夫ですから!」

エイミア様の声が聞こえる。痛みと強く大きい鼓動の音。ここまで取り乱していらっしゃる声は初めて聞いた。いや、どこかで聞いた事がある気がするけれど口からも吐血したせいか頭が回らず思い出せない。
一体どこで聞いたんだ。また魔力を暴発させてしまわないだろうか。彼女の体に負担は掛からないだろうか。
くそっ、意識が遠退く。まだ生きていなければいけないのに。
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