好きなんだから仕方ない。
違うな。生きていなければいけないんじゃない。生きていたいんだ。彼女と二人、笑い合える日を迎えるために死ねない。死にたくない。一度助けてもらったこの命、簡単に死んでたまるか。

「いやっ!離してっ!クロエラ!!」

「これは・・・?・・・エイミア。お前、この人に何をした?」

パルドメールさんの声など聞いてはいなかった。エイミア様はどうやって抜け出したのか、ヅヌダクの腕の中から俺のそばに駆け寄って強く手を握ってくださった。
なんて温かくて優しいのだろう。か細くてか弱いのに守りたくなるような頼りたくなるような不思議な手をしていらっしゃる。
俺は握られていないもう片方の手でエイミア様の頬に触れた。あぁ、俺はまだ生きているんだ。エイミア様は襲われていないんだ。良かった、本当に良かった。
安心したせいで意識を失ったのか、目を覚ますと太陽がいつものように上っていた。でも、血で汚れた自分の体と彼女の手と頬が夢ではない事を知らせてくれていた。
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