好きなんだから仕方ない。
眠ってしまった彼女の髪を撫でながらどうしたら助けられるのかと頭だけ働かせていた。探し回れば良いのに、彼女の死を目前にしてぎりぎりまで一緒に過ごしていたいという欲が出てしまっているんだ。

「ヅヌダク。ここにいたのですか」

「あぁ。ぎりぎりまでそばにいたくてな。お前もか?クロエラ」

「えぇ。私のせいでこのような事態を招いてしまったのは事実ですから」

「そうか。エイミア様もお前がそばにいてくれれば喜ぶだろうよ」

部屋に入ってきたクロエラは俺の向かいに座ると反対側の手を強く握っていた。無力さに震えたクロエラに答えるかのように、エイミア様の手に少しだけ力がこもった気がした。
もう助けられないかもしれない。心のどこかではお互い、そう思っていたからエイミア様のそばを離れられなかったんだと思う。
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