好きなんだから仕方ない。
やっぱり普通に喋っているような声ではない。心や頭の中に直接話し掛けてきているような、そんな聞こえ方をしていた。

「誰だ?何で泣いている?」

「私は泣いているの?誰のために?」

「分からないのか?」

「分からない・・・?知りたいの」

初めて会話らしい物が出来た。いつもなら俺の声なんて聞こえていないかのように一方的に助けてと言うだけだったのに。勝手に話し掛けてきて勝手に混乱して勝手にいなくなるのに。
やっぱりここにいるのか?だから俺の声が聞こえて返事をくれたのか?今まで返ってこなかったのは聞こえる距離にいなかったから?
早く声の正体を知りたい。その一心で今いる空間を調べた。でも、どの壁を調べてもどの床を調べても何もなかった。見えないほど高い天井の近くに何かあるのかと思ったけれど神の使いではない普通の魂である俺には高く飛ぶ事なんて出来ない。
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